「今年はいくら上がるのだろうか」。パートやアルバイトを雇う経営者の方には毎年夏の関心事ですが、2026年度の改定はすでに始まっています。結論から言うと、神奈川県の最低賃金は2026年10月1日から時間額1,279円(+54円、4.40%増)に改定されました。改定の内容と、発効後に確認しておきたいことを整理します。
目次
神奈川県の最低賃金は2026年10月1日から1,279円
令和8年度の改定内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 令和7年度(2026年9月30日まで適用) | 1,225円(2025年10月4日発効) |
| 令和8年度(2026年10月1日から) | 1,279円 |
| 引上げ額 | 54円 |
| 引上げ率 | 4.40%(神奈川労働局の公表値) |
| 改正決定 | 2026年8月27日 |
| 官報公示 | 2026年8月31日 |
| 発効 | 2026年10月1日 |
(出典: 神奈川労働局 報道発表 令和8年8月27日)

そもそも最低賃金とは?パート・アルバイトも対象
最低賃金とは、会社が支払わなければならない時給の下限です。正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣スタッフにも適用され、下回る契約をしてもその部分は無効となります。
10月1日をまたぐ給与計算の注意点
- 9月30日までの労働は1,225円、10月1日以降の労働は1,279円が適用されます。月単位ではなく、労働した日で区切ります
- 締め日が月末以外(15日締めなど)の会社は、1つの給与計算期間の中で単価が変わります。給与ソフトの設定をご確認ください
- 月給制・日給制の方も対象です。時間額に換算して1,279円を下回っていないかを確認します。換算では精皆勤手当・通勤手当・家族手当・時間外割増などを除きます
- 対象は1,225円ちょうどの方だけではなく、1,279円未満の方すべてです
国の目安と「全国平均1,500円」の正しい読み方
最低賃金は、国の中央最低賃金審議会が示す引上げ額の「目安」を踏まえて、各都道府県の審議会が決めます。令和8年度の目安は2026年7月28日に答申され、Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円とされました。神奈川県はAランクです。目安どおりに全国で改定された場合、全国加重平均は1,176円になる見込みです(出典: 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」)。この1,176円は見込み値で、確定値ではありません。
「全国平均1,500円」は「全国どこでも1,500円」ではありません
ニュースの見出しで「最低賃金1,500円」を目にして、「うちも1,500円にしなければいけないのか」と受け取っている方が少なくありません。「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定)本文11ページの記述は、次のとおりです。
最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(骨太方針2025)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する。
ポイントは2つです。ひとつは、目標はあくまで「全国平均」1,500円であり、全国どこでも1,500円以上にするという意味ではないこと。神奈川のように水準の高い県は平均より先に到達し、低い県は後になります。
もうひとつは、目標時期の表現が2つ並んでいることです。骨太方針2025の「2020年代に」という目標と、「遅くとも2030年代前半できる限り早期に」という表現が同じ一文の中に書かれています。どちらを前提に計画を組むかは、経営者の判断になります。
日吉・横浜の中小企業にどう影響する?人件費の試算
パート・アルバイト比率が高いほど、影響は大きくなります。
試算例: パート10人の店舗で年間いくら増える?
日吉で飲食店を営むAさんのお店で、パート10人が1日6時間・月20日働いているとします。全員の時給が54円上がると、次のとおりです。
- 54円 × 6時間 × 20日 × 10人 = 月64,800円
- 年間では約78万円(64,800円 × 12か月 = 777,600円)
これは全員が同額だけ上がると仮定した機械的な試算で、実際の上げ幅はもともとの時給によって変わります。時給が上がると社会保険料の会社負担分も連動して増える点にもご注意ください。
「年収の壁」との関係にも注意
最低賃金が上がると、同じ勤務時間でも年収は増え、扶養内で働くスタッフが「年収の壁」に早く到達します。勤務時間の調整を希望する方が増えれば、シフト運営にも影響します。詳しくは別の記事をご覧ください。
賃上げ負担を軽くする2つの支援策
負担をやわらげる制度を2つ押さえておきましょう。
業務改善助成金(申請と賃上げの順序にご注意ください)
事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った場合に、費用の一部を国が助成する制度です。令和8年度は2026年9月1日から交付申請を受け付けていました。
いちばん大切なのは、賃上げと申請の順序です。厚生労働省は「事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります」としています。つまり、交付申請より前に時給を上げてしまうと対象になりません。改定にあわせて時給を上げてから申請しても対象外です。
申請締切も「地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日」とされています。神奈川県は10月1日発効ですから、この規定にあてはめると、令和8年度の締切は2026年9月30日で、すでに過ぎています。
令和8年度からは、物価高騰等の要件に該当する特例事業者について、パソコン・スマートフォン・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入が助成対象経費に追加されました。特例事業者の要件は、ア「事業場内最低賃金が1,050円未満」、イ「申請前最近6か月平均の利益率が前年同期比3%ポイント以上低下」です。
助成の上限額・助成率・最新の申請日程は厚生労働省のページでご確認ください。申請手続そのものは社会保険労務士の業務範囲です。
賃上げ促進税制(中小企業は最大45%の税額控除)
給与総額を前年度より増やした企業が、増加額の一部を法人税から差し引ける制度です。中小企業の場合は次のようになります(出典: 国税庁タックスアンサーNo.5927-2)。
| 要件 | 控除率 |
|---|---|
| 給与総額が前年度比1.5%以上増 | 増加額の15% |
| 給与総額が前年度比2.5%以上増 | +15%(合計30%) |
| 教育訓練費が前年度比5%以上増、かつ給与総額の0.05%以上 | +10% |
| くるみん・えるぼし認定など(認定区分に条件あり) | +5% |
| 最大 | 45% |
控除できるのは、その事業年度の調整前法人税額の20%までです。ただし中小企業は、控除しきれなかった分を5年間繰り越せます(繰越控除を使う年度にも、給与総額が前年度を上回っていることが条件です)。赤字の年度に賃上げをしても、将来の黒字年度で控除できる可能性があるということです。適用できるのは令和9年3月31日までに開始する事業年度で、可否は決算内容によって異なります。詳しくは税理士にご相談ください。
発効後に確認しておきたいチェックリスト
- 全従業員の時給・給与を一覧にし、時給1,279円未満の方が残っていないか確認する
- 月給制・日給制の方の時間額換算をチェックする
- 給与ソフトの時給単価が、10月1日分から切り替わっているか確認する
- 扶養内で働くスタッフのシフト・年収への影響を確認する
- 引上げ分を織り込んだ資金繰り表を作る
- 賃上げ促進税制の適用可能性を検討する(業務改善助成金は来年度に向けて申請が先、賃上げが後を押さえる)
まとめ
- 神奈川県の最低賃金は、2026年10月1日から1,279円(+54円・4.40%)に改定された
- 9月30日までは1,225円。労働した日で区切って適用するため、締め日が月中の会社は期間内で単価が変わる
- 洗い出す対象は「1,225円の人」ではなく「1,279円未満の人全員」
- 国の目標は「全国平均1,500円」。全国どこでも1,500円という意味ではない
- 業務改善助成金は交付申請が先、賃上げが後。順序を逆にすると対象外になる
最低賃金の引上げは、人件費計画や資金繰り、助成金・税制の活用まで幅広く関わります。横浜市・日吉エリアで賃上げ対応や人件費計画にお悩みの方は、安藤清隆税理士事務所へお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせて、使える制度と進め方をご一緒に整理いたします。





