「今年も最低賃金は上がるのだろうか。いくら上がるのだろうか」。パートやアルバイトを雇う経営者の方なら、毎年夏に気になるテーマではないでしょうか。神奈川県の最低賃金は現在1,225円で、全国でもトップ級の水準です。この記事では、2026年度改定の審議状況と例年のスケジュール、人件費への影響、そして中小企業が使える支援策をまとめました。なお、2026年7月21日の執筆時点で、今年度の改定額はまだ決まっていません。「今わかっていること」と「これから決まること」を分けてお伝えします。
目次
神奈川県の最低賃金は現在1,225円(2025年10月4日発効)
まず現状の確認です。神奈川県の最低賃金は、時間額1,225円です(出典: 神奈川県、令和7年度)。2025年10月4日に発効し、現在もこの金額が適用されています。東京都に次ぐ全国トップ級の水準です。
そもそも最低賃金とは?パート・アルバイトも対象
最低賃金とは、会社が従業員に支払わなければならない賃金の最低ライン(時間額)のことです。都道府県ごとに金額が決められています。正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣スタッフにも適用されます。雇用形態は関係ありません。もし最低賃金を下回る時給で契約していても、その部分は無効です。法律上、最低賃金額で契約したものとして扱われます。
【図解】昨年度(2025年度)は過去最大の63円引上げ
| 年度 | 神奈川県の最低賃金 | 引上げ額 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 1,162円 | ― |
| 2025年度(現行) | 1,225円 | +63円 |
(出典: 神奈川県「神奈川県最低賃金について」令和7年度)

昨年度の引上げ幅63円は、神奈川県では過去最大級でした。日吉・綱島・元住吉エリアは東京に隣接し、もともと時給相場が高い地域です。それでも、最低賃金に近い時給で募集している求人は少なくありません。引上げの影響を受ける事業者は多いといえます。
2026年度の改定はどうなる?審議の最新動向【2026年7月21日時点】
結論からいうと、2026年度の改定額はまだ決まっていません。ただし、例年どおりであれば7月下旬に国の「目安」が示されます。その後、神奈川県での改定は10月頃になる見込みです。
中央最低賃金審議会で審議が進行中
最低賃金は、まず国の中央最低賃金審議会が引上げ額の「目安」を示します。現在、その目安を話し合う小委員会の審議が進行中です。報道によると、7月23日の小委員会で7月中の決着を目指しているとされています。また、政府は「最低賃金1,500円」を2030年代前半のできる限り早い時期に達成する目標を掲げていると報じられています。
【図解】改定までのスケジュール(例年の流れ)
例年の流れは次のとおりです。
- 7月下旬: 中央最低賃金審議会が引上げ額の「目安」を答申
- 8月頃: 神奈川地方最低賃金審議会が神奈川県の改定額を審議・答申
- 9月頃: 改定額と発効日が公示される
- 10月頃: 新しい最低賃金が発効

参考までに、昨年度の神奈川県は2025年10月4日発効でした(出典: 神奈川県、令和7年度)。今年も秋の発効を想定して準備しておくと安心です。
「いくら上がるか」の見方と注意点
具体的な引上げ額を断定することは、現時点ではできません。参考になるのは昨年度の実績です。神奈川県は63円の引上げ、全国加重平均は66円増の1,121円でした(出典: 厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧」)。報道では、今年度も労使双方が引上げの必要性では一致しているとされています。一方で、中小企業の支払い能力への配慮を求める声も出ています。
改定額が正式に決まりましたら、この記事に追記してお知らせします。
日吉・横浜の中小企業にどう影響する?人件費の試算
パート・アルバイト比率の高い事業者ほど、影響は大きくなります。改定額の発表を待ってから動くのではなく、今のうちに人件費計画を点検しておきましょう。
試算例: パート10人の店舗で年間いくら増える?
日吉で飲食店を営むAさんのお店を例に考えます。パート10人が、1日6時間・月20日働いているとします。仮に時給が30円上がった場合の増加額は、次のように計算できます。
- 30円 × 6時間 × 20日 × 10人 = 月36,000円
- 年間では約43万円の負担増
これはあくまで「仮に30円上がったら」という機械的な試算です。実際の引上げ額は審議会の答申で決まります。また、時給が上がると社会保険料の会社負担分も連動して増える点に注意が必要です。
「年収の壁」との関係にも注意
最低賃金が上がると、同じ勤務時間でも年収は自然に増えます。その結果、扶養内で働くスタッフが「年収の壁」に早く到達しやすくなります。勤務時間の調整を希望するスタッフが増えれば、シフト運営にも影響します。壁を意識した働き方と社会保険の仕組みについては、106万円の壁の撤廃を解説した記事で詳しく解説しています。
賃上げ負担を軽くする2つの支援策
賃上げの負担をやわらげる制度として、「業務改善助成金」と「賃上げ促進税制」の2つを押さえておきましょう。
業務改善助成金(設備投資+賃上げで費用を助成)
業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った場合に、その費用の一部を国が助成する制度です(出典: 厚生労働省、令和8年度)。券売機の導入や業務ソフトの入れ替えなども対象になり得ます。
令和8年度は、2026年9月1日から交付申請の受付が始まります。事業完了期限は交付決定年度の1月31日です(やむを得ない場合の延長規定あり)。助成の上限額や助成率は、引上げ額・対象人数・現在の賃金水準によって変わります。
賃上げ促進税制(中小企業は最大45%の税額控除)
賃上げ促進税制とは、従業員の給与総額を前年度より増やした企業が、増加額の一部を法人税から差し引ける制度です。中小企業の場合、次のようになります(出典: 国税庁タックスアンサーNo.5927-2)。
| 要件 | 控除率 |
|---|---|
| 給与総額が前年度比1.5%以上増 | 増加額の15% |
| 給与総額が前年度比2.5%以上増 | +15%(合計30%) |
| 教育訓練費が前年度比5%以上増(等) | +10% |
| くるみん・えるぼし認定など(認定区分に条件あり) | +5% |
| 最大 | 45% |
※上乗せ措置には、それぞれ細かい適用要件があります。
控除できるのは、その年度の法人税額(調整前)の20%までです。ただし中小企業は、控除しきれなかった分を5年間繰り越せます(繰越控除を使う年度にも給与総額が前年度を上回っていることが条件です)。赤字や利益の少ない年度に賃上げをしても、将来の黒字年度で控除できる可能性があるということです。適用期間は、令和9年3月31日までに開始する事業年度です。適用できるかどうかは決算の内容によって異なります。詳しくは税理士にご相談ください。
改定発表までにやっておきたい準備チェックリスト
改定額の正式決定を待つ間に、次の準備を進めておきましょう。
- 全従業員の時給・給与を一覧にして棚卸しする
- 現在の時給が1,225円に近い従業員を洗い出す
- 扶養内で働くスタッフのシフト・年収への影響を確認する
- 業務改善助成金・賃上げ促進税制の適用可能性を検討する
- 引上げ分を織り込んだ資金繰り表を作る
確定情報は、神奈川県および神奈川労働局の公表ページで確認できます。答申が出る7月下旬以降は、公式発表をチェックしましょう。
まとめ
- 神奈川県の最低賃金は現在1,225円(2025年10月4日発効)で全国トップ級
- 2026年度の改定額は7月21日時点で未確定。中央審議会で審議中
- 例年どおりなら7月下旬に国の目安、神奈川では10月頃に改定発効の見込み
- 賃上げ負担には「業務改善助成金」と「賃上げ促進税制(最大45%控除)」が使える
- 改定額の発表前に、時給の棚卸しと資金繰りへの織り込みを進めておく
最低賃金の引上げは、毎年の人件費計画や資金繰り、助成金・税制の活用まで幅広く関わるテーマです。横浜市・日吉エリアで賃上げ対応や人件費計画にお悩みの方は、安藤清隆税理士事務所へお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせて、使える制度と進め方をご一緒に整理いたします。





