中小企業・オーナー経営者の方へ
事業計画や融資のこと、補助金のこと、会計のこと、決算のこと。
お金の悩みやご不安、地域密着の税理士事務所を活用してみませんか。

神奈川県の生産性向上補助金|8月31日締切・最大500万円

記事更新日:

「人が採れない」「機械が古くて、いつまでも手作業が減らない」「値上げの前に、まず自社の効率を上げたい」。横浜・川崎の経営者から、こうしたご相談が続いています。実は、神奈川県内に事業所がある事業者だけが使える設備投資の補助金があります。令和8年度の受付は8月31日まで。この記事では、3つの枠の違い、自社が対象になるか、創業間もない方が使える枠、そして申請前に必ず知っておきたい「お金の落とし穴」までを、税理士がわかりやすく整理します。

※この記事は2026年7月28日時点の情報です。補助金の公募状況や要件は変わることがあります。申請前には必ず公式ポータルサイト(https://r8seisansei.pref.kanagawa.jp/)で最新情報をご確認ください。

神奈川県の生産性向上補助金とは?

結論から言うと、神奈川県内の事業所で生産性を上げるための設備やITツールを導入するとき、その費用の2分の1〜3分の2を県が補助してくれる制度です。正式名称は「令和8年度 中小企業生産性向上促進事業費補助金」といいます。長いので、この記事では「神奈川県の生産性向上補助金」と呼びます。

背景にあるのは、人手不足と物価高です。人を増やして売上を伸ばす、という手が使いにくい今、「今いる人数で、もっと成果を出せる形」に会社を作り替える必要があります。県はその設備投資を後押しする、という位置づけの制度です。

対象になるのは、県内の事業所で補助事業を実施する中小企業者です。公式サイトでは「県内の事業所で補助事業を実施する中小企業支援法第2条第1項に規定する中小企業者」と定められています。特定非営利活動法人(NPO法人)や社会福祉法人も、従業員数300人以下であることなど一定の要件を満たせば対象になり得ますが、グループ化支援枠は対象外とされています(出典: 神奈川県公式ポータル「補助金概要」およびよくある質問 Q5-16・Q5-17、2026年7月28日確認)。

ここでよくいただく質問が、「横浜市や川崎市の会社も使えるのですか?」というものです。使えます。 神奈川県の制度なので、政令指定都市である横浜市・川崎市に事業所があっても対象です。日吉・綱島・元住吉・新横浜の事業者の方も、当然に検討できます。

ただし、県の補助金である以上、申請時点で県内の事業所で実態のある事業を営んでいること、そして導入する設備を県内に設置することが要件です(よくある質問 Q2-1)。県外の拠点に入れる設備は対象になりません。

なお、国の「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」とは別の制度です。国の制度が全国の事業者を対象にするのに対し、こちらは神奈川県内の事業者向けという違いがあります。国の補助金と併願すること自体は認められています(詳しくは後半で触れます)。

【図解】3つの枠を比べる — 一般枠・グループ化支援枠・創業者成長支援枠

結論として、多くの読者の方に関係があるのは「一般枠」と「創業者成長支援枠」の2つです。まず全体像を表で確認しましょう。

一般枠 グループ化支援枠 創業者成長支援枠
こんな方向け 設備・ITで生産性を上げたい県内事業者 M&A等でグループ化した企業 令和5年4月1日以降に創業した事業者
補助上限額 500万円 1グループあたり4,000万円 300万円
補助下限額 25万円 1申請あたり500万円 25万円
補助率 2分の1以内
(小規模事業者は3分の2以内)
2分の1以内
(小規模事業者は3分の2以内)
一律3分の2以内
創業時期の条件 令和7年4月1日までに創業 令和7年4月1日までに創業 令和5年4月1日以降に創業
受付締切 8月公募=8月31日(月)17時 8月公募=8月31日(月)17時 8月31日(月)17時

(出典: 神奈川県公式ポータル「補助金概要<一般枠・グループ化支援枠>」「補助金概要<創業者成長支援枠>」およびよくある質問 Q5-18、2026年7月28日確認)

神奈川県生産性向上補助金の3つの枠の比較。一般枠500万円、創業者成長支援枠300万円、グループ化支援枠4000万円

補助の対象になる経費は3つの区分

補助対象経費は、①機械装置等費 ②ITサービス導入費 ③施設工事費の3つに区分されています。ここで注意したいのが、区分ごとの上限です。

  • ②ITサービス導入費(補助事業の遂行に必要なITサービス・システムの導入や開発の経費)は50万円が上限
  • ③施設工事費(機械装置等を設置するために必要な最低限の改修工事の経費)は100万円が上限。しかも、施設工事費だけの申請はできません

(出典: 公式ポータル「よくある質問」Q1-6、2026年7月28日確認)

たとえばCADソフトは、工作機械と一体で導入すれば「機械装置等費」ですが、ソフト単体で買うと「ITサービス導入費」になり50万円の上限がかかる、と公式のよくある質問(Q7-2)で説明されています。同じソフトでも買い方で扱いが変わるということです。ホームページ制作費やリース・レンタル、中古品の扱いなど、細かい可否は公募要領に定めがありますので、購入方法を決める前にご確認ください。

見落としやすい「下限額」に注意

上の表で見落としやすいのが補助下限額です。一般枠と創業者成長支援枠は、補助金額の下限が25万円。つまり、計算上25万円に届かない小さな投資では申請できません。

自分の投資額に置き換えると、こうなります。

  • 補助率3分の2の場合: 補助対象経費が約37.5万円以上必要(37.5万円 × 2/3 = 25万円)
  • 補助率2分の1の場合: 補助対象経費が50万円以上必要(50万円 × 1/2 = 25万円)

創業者成長支援枠については、公益財団法人 神奈川産業振興センターも「補助対象経費が37.5万円以上(消費税および地方消費税を除く)の事業が対象」と案内しています(2026年7月28日確認)。ご自身の投資額が下限に届くか、早めに計算しておきましょう。なお、消費税の具体的な取扱いは公募要領・交付要綱に定めがありますので、そちらでご確認ください。

補助率が変わる「小規模事業者」とは

一般枠は、小規模事業者に当たるかどうかで補助率が2分の1と3分の2に分かれます。500万円の投資なら、補助額が250万円と333万円。差は大きいです。

公式サイトによれば、対象は「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律第2条に規定する小規模事業者等」。公式のよくある質問(Q1-7)でも「小規模事業者は、業種ごとに常時使用する従業員数により決定します」と説明されています。

この法律が定める基準は、常時使用する従業員の数がおおむね20人以下商業・サービス業を主たる事業とする場合は5人以下)です。ただし、補助金でこの基準がどう当てはめられるか(パート・アルバイトの数え方など)は公募要領に細かい定めがありますので、ご自身の業種・従業員数で該当するかは必ず公募要領でご確認ください。判断に迷うときは事務局か税理士にご相談を。

グループ化支援枠について

グループ化支援枠は、M&Aなどで第三者の経営権や事業を取得し、グループになった場合に使う枠です。経営権や事業の取得日が令和7年4月1日から申請日までの間であることが主な要件とされています(よくある質問 Q3-1)。1グループあたり4,000万円と金額は大きいものの、1申請あたりの下限が500万円と高く、該当する事業者は限られます。中小規模の会社が単独で設備を入れる場合は、まず一般枠を検討するのが現実的です。

令和5年4月1日以降の創業なら「創業者成長支援枠」を必ず見てほしい

結論として、令和5年(2023年)4月1日以降に創業した方は、補助率が一律3分の2。一般枠より有利な条件で使えます。令和8年度に新設された枠です。

ここは表現に注意が必要です。「創業3年以内」と覚えてしまうと、2023年の春〜夏に創業した方が「自分はもう3年を超えたから対象外だ」と誤解しかねません。基準は年数ではなく、令和5年4月1日という日付です。2026年8月時点なら、創業から3年4か月ほど経っていても対象になります。

逆に、一般枠とグループ化支援枠は「令和7年4月1日までに創業している方」が対象です(よくある質問 Q5-18)。令和7年4月2日以降に創業した方は、一般枠ではなく創業者成長支援枠を見ることになります。

どれくらい有利になるか、金額で見てみましょう。300万円の設備を導入する場合です。

補助率 補助額 自己負担
一般枠(中小企業) 2分の1 150万円 150万円
創業者成長支援枠 3分の2 200万円 100万円

自己負担が50万円変わります。創業間もない時期の50万円は、決して小さくありません。

主な要件

公式ポータル・よくある質問および神奈川産業振興センターの案内によると、主な要件は次のとおりです(2026年7月28日確認)。

  • 令和5年4月1日以降に創業していること(よくある質問 Q4-1・Q4-2)
  • 神奈川県内の事業所で、実態のある事業を営んでいること
  • 地域の支援機関の伴走支援を、補助金の交付を受けるまで継続して受けること(必須)
  • 申請前と交付決定後に、原則それぞれ1回ずつ、事業所でのヒアリングがあること
  • 公募期間は令和8年5月1日9時から8月31日(月)17時まで

注意点として、創業に際して必要となる設備等の導入費用(イニシャルコスト)は対象外とされています(よくある質問 Q4-6)。この補助金はあくまで「すでに動いている事業の生産性を上げる」ための制度、という位置づけです。「事業を始めたばかりだが申請できるか」という質問に対しては、公式のよくある質問(Q5-18)で「事業所得と判断できる売上があれば、創業者成長支援枠での申請が可能です」と回答されています。

なお、「創業」の起算日が法人の設立日を指すのか、個人事業の開業日を指すのかは、公式サイト上では明示されていません。添付書類として個人事業主には開業届、法人には履歴事項全部証明書が求められています(Q5-4)が、判定に迷う場合は公募要領を確認するか、事務局にお問い合わせください。ここを取り違えると対象かどうかの判断が変わってしまう、大事なポイントです。

伴走支援は「手間」ではなく「機会」です

「支援機関のヒアリングがあるのか、面倒だな」と感じる方もいるかもしれません。ですが、当事務所はここをメリットだと考えています。

事業計画は、経営者ご自身の言葉で作るものです。第三者に「その設備で、何が、どれくらい変わるのですか」と問われる場は、計画を鍛える貴重な機会になります。補助金に通るためだけでなく、その後の融資交渉でも同じ問いを受けるからです。

実際、公式のよくある質問(Q4-4)にも「申請にあたっては、申請者が主体的に計画を作成し、申請手続きや、補助事業を実施してください。申請者に主体性が確認できない場合は補助の対象となりません」と明記されています。丸投げは、そもそも制度が想定していないということです。

伴走支援を行う機関としては、公益財団法人 神奈川産業振興センターのほか、神奈川中小企業団体中央会、県内各商工会・商工会議所が挙げられています(神奈川産業振興センターの案内より)。横浜市内であれば横浜商工会議所も身近な窓口です。公式ポータルには「相談機関一覧」も掲載されています。どの機関に相談すべきか迷う場合は、補助金事務局(045-315-3755/平日9時〜17時)に確認するのが確実です。

例えば、こんなケース

日吉で2年前に開業した美容室のAさん。予約管理を紙の台帳で行っており、電話対応と記帳に毎日1時間以上とられています。予約・顧客管理・レジを一体化した機器を60万円で導入すれば、補助率3分の2なら補助額は40万円、自己負担は20万円という計算になります。

ただし、この計算は導入するものが「機械装置等費」に当たる場合の目安です。ソフトウェアやクラウドサービスが中心なら「ITサービス導入費」となり、50万円の上限がかかります。何を、どの区分で買うのかによって金額が変わる点にご注意ください。

大事なのは金額よりも、「その設備で何がどう変わるか」を数字で言えるかです。「1日1時間の事務が20分に減り、その分を1名分の施術枠に回せる」——ここまで具体化できると、計画書の説得力は一段上がります。

当事務所は創業3年以内の事業主の方からのご相談を多くお受けしています。「うちは対象になるのか」という段階からご相談いただけます。

【図解】申請から入金まで — 「補助金は後払い」という最大の落とし穴

ここが、この記事で一番お伝えしたい部分です。結論を先に書きます。

補助金は、先に自分で全額を支払ってからでないと、1円も入ってきません。

公式ポータルには「実績報告書類の審査により、適正に補助事業が行われたことを確認できた場合のみ、補助金を交付」と明記されています。つまり精算払い(後払い)です。流れを追うと、こうなります。

  1. 申請(8月31日17時まで)
  2. 審査
  3. 交付決定
  4. 交付決定後に発注・契約・支払い(原則。事前着手届を提出した場合を除く)
  5. 事業の実施
  6. 実績報告
  7. 審査を経て補助金の入金
補助金は後払い。申請から入金までの7ステップと立て替え期間、手元資金の推移

立て替え期間は「数か月」ではなく「半年前後」になり得ます

ここで、実際の日程を当てはめてみます。公式のよくある質問とポータルのスケジュールによれば、令和8年度は次のような流れです(2026年7月28日確認)。

  • 一般枠・グループ化支援枠は、各締切日から3か月程度で交付・不交付を決定(よくある質問 Q1-9)
  • 創業者成長支援枠は、申請後2か月程度で交付・不交付を決定(同 Q1-10)
  • 補助事業の完了期限は令和9年1月31日(日曜日)(同 Q1-9・Q1-10)
  • ポータルのスケジュールでは、実績報告の期限が2月6日、補助金の交付は2月下旬以降順次

8月公募で申請した場合、交付決定はおおむね11月ごろ。そこから発注・支払いをして、1月31日までに事業を終え、2月上旬に実績報告、入金は早くても2月下旬以降ということになります。申請から入金まで半年前後、支払いから入金までも数か月。この間の資金は、すべて自分で用意する必要があります。

「500万円の設備に500万円の補助」ではありません

よくある誤解を解いておきます。上限500万円と聞くと、「500万円の設備がタダで手に入る」と受け取ってしまう方がいます。そうではありません。

500万円の設備を入れるなら、まず自分で500万円を用意して支払う。そのうち一定割合が、事業が終わって報告と審査を通ってから、戻ってくる。この順番を取り違えると、資金繰りが止まります。

さらに、審査の方法も枠によって違います。一般枠・グループ化支援枠は「先着順ではなく、各回毎に公募いただいた全ての申請を一斉に審査」(よくある質問 Q1-11)、創業者成長支援枠は「申請受付後に随時行います」(同 Q1-12)とされています。いずれにせよ、申請すれば必ず採択されるものではありません。

立て替え期間をどう乗り切るか

そこで本題です。この立て替え期間を、何のお金で乗り切りますか。

手元資金だけで払い切れるなら問題ありません。ですが、設備代で預金を使い切ってしまい、その後の仕入や家賃の支払いが細くなる——これが一番危ない形です。補助金は数か月先にしか入ってきません。その数か月を、痩せた手元資金で走ることになります。

だからこそ当事務所は、設備投資の資金は、先に融資で用意しておくことをおすすめしています。

当事務所の考え方の軸は、「融資は期限付きの強化アイテム」です。返済期限の間だけ使える、事業を強くするための道具。怖がって使わなければ、装備が足りないまま資金繰りという強敵に挑むことになります。補助金が出るからと手元資金を使い切るより、必要な資金は先に借りておいて、入ってきた補助金は返済原資や次の投資に回す。そのほうが、会社の体力は落ちません。

金額の目安として、当事務所では事業規模にもよりますが「まずは1,000万円の融資を目指す」とお伝えしています。設備資金と運転資金をセットで考え、設備を入れた後も数か月分の運転資金が手元に残る形にしておく。それが、補助金を安心して使うための前提条件です。

ちなみに、申請書の中でもこの点は問われます。補助事業計画書では必要資金額と資金調達額を一致させたうえで、金融機関等への相談状況を具体的に記載するよう求められています(よくある質問 Q6-6)。資金の裏づけは、審査の対象でもあるということです。

融資の進め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
横浜・日吉の創業融資ガイド|公庫と制度融資の選び方

入金後こそ、再認識を

そして、必ずお伝えしていることがもう一つあります。

借りた資金も、受け取った補助金も、入金されると気が大きくなりがちです。 口座の残高が増えると、まるで自分の実力で稼いだお金のように感じてしまう。今すぐ要らない設備、効果の見えない広告、先行しすぎた人件費——財布のひもが緩むのは、決まって入金直後です。

融資は自分のお金ではなく、期限付きの強化アイテムです。補助金も、使途と報告義務が決まった資金です。どちらも「お金が増えた」のではありません。入金された後こそ、そう捉え直してください。

税金の話も、先に知っておく

もう一点。受け取った補助金は、原則として収入になります(法人なら益金、個人事業なら事業所得の総収入金額)。公式のよくある質問(Q7-4)にも「当該補助金は課税対象となりますので、その他収入と合わせて申告が必要です(圧縮記帳の対象です)」と明記されています。

一方で設備の費用は減価償却で数年に分けて費用化されるため、補助金が入った年度だけ利益が大きく出て、思ったより税金が発生することがあります。この差を調整するのが「圧縮記帳」(補助金で買った資産の帳簿価額を減らして、その年の課税を先送りする処理)です。ただし、実際に適用するには要件があり、法人か個人か、資産の種類や取得の時期によって処理の方法も変わります。具体的な処理は個別の判断になりますので、税理士にご相談ください。

申請前に確認したい5つのポイント

結論として、対象外になりやすいパターンは事前に潰せます。公式のよくある質問(2026年7月28日確認)から、特に気をつけたい5点を挙げます。

① 「単なる買い替え」は対象外
「単なる設備の更新で生産性の向上に繋がらないもの」は対象外と明記されています(Q1-5)。壊れたから同じ機械に入れ替える、では通りません。その設備で何がどう変わるのかを自分の言葉で説明できるかが分かれ目です。

② 執務環境の改善や汎用品は対象外
「執務環境の改善等、生産性向上に直接寄与しないもの(一般的な空調機、照明等)及び汎用的に使用可能な機械(自動車、スマートフォン等)」は対象外とされています(Q1-5)。事務所を快適にする投資は、この補助金の対象ではありません。

③ 「付加価値額」と「給与」の計画が求められる
見落とされがちですが、対象要件として「付加価値額を年率平均1.5%、3年で4.5%以上を増加させる計画であること」「給与支給総額を増加させること」の2点が求められます(Q2-2)。「設備導入により付加価値額が上がり、その利益を賃金に還元できる計画となっているか」という視点で審査される、と説明されています。設備を入れて終わり、ではなく、その先の数字まで描けているかが問われます。

④ 交付決定前に発注しない
原則として、交付決定より前に発注・契約したものは対象になりません。ただし例外があり、「申請時に事前着手届を提出した場合のみ、申請日から補助事業への着手が可能」とされています(Q1-9)。良い設備が見つかっても、手続きの順番を飛ばさないでください。

⑤ 他の補助金との重複申請は可能。ただし両方採択されたら一方を取下げ
「他の補助金と県の補助金を重複申請することは問題ありません」とされています(Q5-19)。ただし、同じ内容で両方採択された場合は、どちらかを取り下げる必要があります。

なお、申請は原則として電子申請システムから行います。添付書類のうち納税証明書は「神奈川県の県税事務所」が発行するものが必要で、税務署が発行する国税の納税証明書を出してしまう間違いが多いと事務局が注意喚起しています(Q5-8)。書類の準備は早めに始めましょう。

そして、申請すれば必ずもらえる制度ではありません。だからこそ、補助金が出ない前提でも回る資金計画にしておくことが大切です。「補助金が採択されたら支払える」という計画は、採択されなかった瞬間に破綻します。

当事務所が補助金のご相談でいつもお伝えするのは、「もらえるから申請する」のではなく、「今の会社に何が足りていないのかを先に見極める」ということです。補助金は、その答えを実行に移すための手段。順番が逆になると、使わない設備が残るだけになってしまいます。

補助金申請の「鉄則」――ここを外すと、いくら書いても通りません

ここまで制度の中身を見てきましたが、最後に、どの補助金にも共通する2つの鉄則をお伝えします。当事務所が申請のご相談を受けるなかで、通る会社と通らない会社を分けているのは、実はこの2点です。

鉄則1|制度の趣旨に自社が合っていなければ、書類の出来では覆らない

補助金には必ず「国や県が、税金を使って何を実現したいのか」という趣旨があります。今回の神奈川県の補助金でいえば、県のページに掲げられているのは「人手不足」と「物価高」への対応であり、生産性の向上です。審査は、この趣旨に自社の計画が合っているかどうかを見ています。

ここを取り違えると、どれだけ丁寧に書類を作っても通りません。

  • 「古くなったから買い替えたい」→ 趣旨は設備の更新ではないので合わない(実際、「単なる設備の更新で生産性の向上に繋がらないもの」は対象外と明記されています)
  • 「働く環境をよくしたい」→ 気持ちは分かりますが、この補助金の趣旨ではない(「執務環境の改善等」は対象外)
  • 「資金繰りが苦しいので補助金がほしい」→ これは融資で解くべき課題であって、補助金の趣旨ではありません

逆に、趣旨に合っていれば話は早くなります。今回の制度なら、「この設備を入れると、誰の何時間の仕事がなくなり、その分どれだけ多く売れるようになるのか」を数字で説明できるかどうか。要件として「付加価値額を年率平均1.5%、3年で4.5%以上増加させる計画」「給与支給総額を増加させること」が求められているのは、まさにその筋道を書かせるためです。

申請書を書き始める前に、まず募集ページの冒頭にある制度の目的を読んでください。そこに自社の課題が重ならないなら、その補助金は自社向けではない、という判断も立派な結論です。合わない補助金に労力を使うより、合う制度を探すか、融資で手当てするほうが早いこともあります。

鉄則2|注文は「交付決定の後」。先に発注したものは対象外になります

これは知らないと本当にもったいない、手続き上の落とし穴です。

原則として、交付決定より前に発注・契約した設備は補助の対象になりません。 「補助金を申請したから、もう買っていいだろう」と考えて先に注文してしまうと、たとえその後に採択されても、その設備は補助の対象から外れます。書類の不備と違って、後から直すことができません。

順番は必ずこうです。

  1. 申請する
  2. 審査を受ける
  3. 交付決定の通知を受け取る
  4. ここで初めて発注・契約・購入する
  5. 設備を導入し、支払いを済ませる
  6. 実績報告 → 確定検査 → 入金

今回の制度では、例外として「申請時に事前着手届を提出した場合のみ、申請日から補助事業への着手が可能」とされています。ただしこれは申請と同時に届け出た場合だけの話です。後から「実は先に発注していました」は通りません。

現場でよくあるのが、「良い機械が見つかったので、売り切れる前に押さえておきたい」というケースです。気持ちは分かりますが、見積書を取って押さえておくのと、発注・契約してしまうのはまったく別です。判断に迷ったら、注文する前に事務局か顧問税理士に一本確認を入れてください。ひと手間で数百万円が変わります。

(出典: 神奈川県「令和8年度中小企業生産性向上促進事業費補助金」公式ポータルのよくある質問。2026年7月28日確認)

まとめ

  • 令和8年度の締切は8月31日(月)17時。一般枠は8月公募、創業者成長支援枠も同日が締切です
  • 一般枠は上限500万円・下限25万円。補助率は2分の1以内、小規模事業者なら3分の2以内
  • 対象経費は①機械装置等費 ②ITサービス導入費(上限50万円) ③施設工事費(上限100万円・単独申請不可)の3区分
  • 令和5年4月1日以降に創業した方は、補助率一律3分の2の創業者成長支援枠を検討する価値があります(一般枠は令和7年4月1日までに創業した方が対象)
  • 補助金は後払い。入金は早くても令和9年2月下旬以降。先に自己資金か融資で全額を立て替える必要があります
  • 融資は「期限付きの強化アイテム」。入金後に気が大きくならないよう、資金の性格を再認識してください
  • 鉄則1:制度の趣旨に自社が合っていなければ、書類の出来では覆りません。この補助金の趣旨は「生産性の向上」。買い替えや環境改善、資金繰り対策では通りません
  • 鉄則2:注文は交付決定の後。交付決定前に発注・契約した設備は対象外になり、後から取り返せません(申請と同時に事前着手届を出した場合のみ例外)
  • 採択は確約されません。補助金がなくても回る資金計画にしておきましょう

一般枠・グループ化支援枠の公募は3回に分けて行われ、8月公募(令和8年8月3日9時〜8月31日17時)が最終回です(6月公募は終了、7月公募は7月31日17時で締切)。なお、電子申請システムは7月31日17時から8月3日9時までメンテナンスのため利用できないと告知されています。最新の受付状況は、申請前に必ず公式ポータルでご確認ください。
神奈川県 生産性向上補助金 公式ポータルサイト

今回間に合わない方へ

今回の締切に間に合わない場合も、次の一手があります。神奈川県には別途「小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金」(上限50万円・補助率3分の2)もありますので、受付状況を県の公式サイトでご確認ください。賃上げとセットで設備投資を行う場合は、厚生労働省の業務改善助成金が令和8年9月1日から交付申請の受付を開始します。販路開拓が目的なら、小規模事業者持続化補助金<第20回>が2026年11月5日から受付開始、締切は12月15日17時です(商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書が必要で、その発行受付締切は12月4日)。それぞれ要件が異なりますので、自社に合うものを選びましょう。

横浜市・日吉エリアで補助金や設備投資の資金繰りにお悩みの方は、安藤清隆税理士事務所へお気軽にご相談ください。「うちは対象になるのか」「設備投資のお金をどう組み立てるか一緒に考えてほしい」——そうした段階でのご相談を歓迎しています。日吉駅から徒歩1分、初回の来所相談は無料です。Zoomでのご相談にも対応しています。

融資について先に情報を集めたい方は、無料メール講座「融資を成功させる5つのポイント」もご用意しています。あわせてご活用ください。

この記事を書いた人

税理士 安藤 清隆(あんどう きよたか)
安藤清隆税理士事務所 代表

横浜市港北区・日吉駅から徒歩1分の税理士事務所です。中小企業とオーナー経営者の会計・融資を専門にしています。節税だけを見るのではなく経営全体を見ること、「融資は期限付きの強化アイテム」であること、「人・もの・金」のバランスを整えることを大切にし、経営者のマネーリテラシーを高める支援をしています。

〒223-0062 神奈川県横浜市港北区日吉本町1-22-10 日吉駅前ビル5階
TEL 045-577-0172(平日9:30-18:00 / 土祝10:00-17:00)
税理士紹介・事務所の理念はこちら

安藤清隆税理士事務所
お電話でのお問い合わせ

「ホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日9:30-18:00(土曜日10:00-17:00)
メールでのお問い合わせ

    ページトップへ戻る