「経営は難しい」「数字を見るのが怖い」。そう感じている経営者の方は少なくありません。まじめな方ほど深刻に悩み、悩むほど手が止まってしまいます。
実は私自身、小さいころ夢中でドラゴンクエストを遊んだ記憶があります。そして今、当事務所の経営そのものを、あのころのゲームのように捉えて取り組んでいます。遊び半分という意味ではありません。ルールを理解し、スコアを確認し、打ち手を改善する。この「上達の構え」を持つほど、経営は早く上手くなり、長く続きます。
この記事では、当事務所の経営支援の土台になっている「経営のゲーム思考」の全体像をご紹介します。
目次
なぜ経営を「ゲームのように」考えるのか
結論から言うと、深刻に悩むよりも、ルールを理解してスコアを追いかける方が、上達が早く長続きするからです。
ゲームが上手な人のやり方はシンプルです。まずルールを把握する。次にスコアを確認する。そして打ち手を変えて、もう一度挑戦する。この繰り返しだけです。失敗しても落ち込まず、「次はどう動くか」に意識が向いています。
経営もまったく同じ構造をしています。ところが経営になると、多くの方が「自分には向いていないのでは」と人格の悩みにすり替えてしまいます。悩む時間を、打ち手を考える時間に変える。これがゲーム思考の出発点です。
もう1つの効能は「没頭」と「継続」です。ゲームのように考えられれば、会社の経営に没頭できます。オンラインゲームをする方なら、ライバルに負けないよう毎日ログインして日課(デイリークエスト)をこなすでしょう。経営も同じです。毎日「ログイン」して数字を見る、記帳をため込まない、小さな改善の日課をこなす。ライバル(競合)との差は、この毎日の積み重ねでつきます。深刻に悩む構えでは毎日は続きません。攻略する構えだからこそ、没頭できて続くのです。
繰り返しになりますが、これは「遊び半分でやろう」という話ではありません。むしろ真剣に上達するための構えの話です。当事務所が掲げる「報われる経営」も、経営者のマネーリテラシー(お金の知識と判断力)を高めるところから始まります。そのための道具が、この後ご紹介する「ゲームの地図」です。
【図解】経営というゲームの全体マップ
結論として、経営というゲームの登場要素は、次の4つに整理できます。

| 要素 | ゲームで言うと | 経営で言うと |
|---|---|---|
| スコア | 得点・経験値 | 売上・利益・手元資金 |
| ステータス画面 | 能力値や所持金の画面 | 試算表・資金繰り表 |
| リソース | 兵力・資材・資金 | 人・もの・金 |
| 強化アイテム | 装備・アイテム課金 | 融資 |
ここで大事なポイントは、スコアが売上だけではないことです。スコアは「売上・利益・手元資金」の3点セットです。売上が伸びても、手元のお金が減り続けていれば、スコアは悪化しています。
そして、スコアを確認する画面が試算表(月ごとの成績表)と資金繰り表です。試算表は月に1回じっくり開き、日々の売上や預金残高は毎日「ログイン」して眺める。この習慣が采配の精度を上げます。画面を見ずにプレイするのは、暗闇でゲームをしているのと同じです。
ここからは、この地図の要素を1つずつ見ていきます。
経費のゲーム思考|スコアに効く支出だけが「必要な課金」
結論から言うと、経営をゲームのように取り組めば、「売上に関係のあるものだけが経費である」と自然に認識できるようになります。
ゲームで課金を考えるとき、基準はただ1つです。「この課金は攻略に効くのか」。攻略に関係のない課金は、どれだけ気分が良くても無駄な出費です。
経営の支出も同じです。スコア(売上・利益)に効くのかどうか。たとえば飲食店の店長が、ライバル店で食べて料理を研究するための飲食。これは売上を作るための支出です。では、ただの生命維持のための食事はどうでしょうか。——この違いは、本当は社長自身が一番よくわかっているはずです。
実はこの感覚は、税務上の経費の考え方とも自然に重なります。経費にあたるかどうかは、「売上を得るために必要な支出かどうか」、つまり売上との関連性が判断の軸になるケースが一般的です。個別の判断は状況によりますので、詳しくは税理士にご相談ください。
経費の境界線については、こちらのガイドで詳しく解説しています。
関連記事: 「これって経費になる?」経費と課税の本当の境界線
経営者の本業は「人・もの・金」の采配
結論から言うと、経営者が考えるべきは、人とものと金の采配を常に考えることです。
戦略ゲームでは、限られたリソースをどこに投じるかで勝敗が決まります。経営も同じで、経営者の本業は現場作業そのものではなく、リソースの采配です。
| リソース | 采配の例 |
|---|---|
| 人(ヒト) | 採用・育成・外注先の見直し |
| もの(モノ) | 設備・店舗・システムへの投資(例: 日吉の飲食店の厨房設備の更新) |
| 金(カネ) | 自己資金と融資の使い分け、利益をどこに再投資するか |
中小企業で最も多いつまずきは、社長が現場作業に埋没し、采配を考える時間がゼロになることです。そして采配の判断材料になるのが、先ほどのステータス画面(試算表・資金繰り表)です。
【人】仲間集めは「会社のレベル上げ」から
結論から言うと、いい人材を獲得するには、見合った会社になるしかありません。まず「自分の会社の魅力をアップさせよう」というのが当事務所の考えです。
思い出してみてください。ゲームでもレベル1のときは、強力な仲間など取得できなかったはずです。強い仲間が加入するのは、主人公のレベルが上がり、装備と実績が整ってからです。
ここで大事なのは、経営は「ゲーム」であって「漫画」ではない、ということです。漫画なら、スタートからいきなり最強のキャラクターが仲間になる展開もあります。しかし経営に、そんな救世主は現れません。ゲームと同じで、着実に一歩一歩、レベルを上げながら進むしかないのです。
これは私自身の実体験でもあります。当事務所も、スタートから賢者やバトルマスターのような高スキルの仲間は雇用できませんでした。最初の仲間は、未経験でも近所に住んでいて、いつでも出勤できるパートさん。そこから一緒に事務所のレベルを上げてきました。
みなさまの会社の採用も同じです。応募が来ない、来てもすぐ辞めてしまう。その原因は、求人の出し方の問題である前に、会社のレベルが人材に見合っていないことにある場合が少なくありません。ここで言うレベルとは、給与水準・労働環境・将来性・利益体質のことです。
では、会社のレベルはどう上げるのか。出発点は利益体質づくりです。
- 利益が出る体質を作る
- 生まれた利益を給与や労働環境に投資する
- 会社の魅力が上がり、さらに良い仲間が集まる
たとえば綱島で建設業を営む社長が職人を採用したい場合、求人票の文言を磨く前に、給与原資を生む利益体質づくりから着手する方が近道になります。会社に利益と資金が残り、社長も社員も豊かになる。この好循環こそ、当事務所が掲げる「報われる経営」です。
【金】装備は全部買えない|「薬草」を忘れないバランス購入
結論から言うと、有限のお金を何に使うか、その優先順位とバランスの采配こそ社長の仕事です。
RPGでも、最初のダンジョンに向かうときには、武器と盾と鎧と兜と薬草が欲しいはずです。でも、すべて買うお金はありません。当然、バランスを考えて買います。経営も同じで、設備・広告・在庫・人への投資はどれも「欲しい装備」ですが、全部は買えません。
とくに忘れがちなのが薬草、つまり手元の運転資金(回復アイテム)です。売上を作る攻撃力の装備ばかり揃えて、薬草を持たずにダンジョンに入ると、途中で力尽きます。投資に踏み切るときも、手元資金は必ず残しておく。この一枠が会社の生死を分けます。
もう1つ、忘れてはいけない視点があります。経営にはスピードも大事だということです。RPGなら、最初のダンジョンに行く前にお金をためて、装備を全部買ってから向かう方法もあります。しかし、経営ではそうはいきません。時間は有限です。お金が貯まるまでの数年間に、市場もライバルも動いてしまいます。
だからこそ、「金」の装備を先に太くして時間を買う手段——次にご紹介する強化アイテム=融資に意味があるのです。
強化アイテム(融資)と最初のクエスト「まずは1,000万円」
結論から言うと、融資は「期限付きの強化アイテム」です。
借入と聞くと「怖い借金」を思い浮かべる方が多いのですが、それで思考を止めてしまうのはもったいないことです。融資は、返済期限の間だけ使える経営強化のツールです。リソースの「金」を先に太くし、人やものへの采配の選択肢を増やしてくれます。
では、強化アイテムは何に使うのか。使い道は「未来投資」です。中でも代表例が人材への投資です。ここで忘れてはいけないのは、人は採用してすぐに戦力になるわけではない、ということです。仲間は、レベルが上がるまでは赤字です。給与や教育の負担が先に来て、成果は後から付いてきます。この赤字の期間をいかに耐えるか——それを支えるのが、薬草(手元の運転資金)であり、強化アイテム(融資)なのです。目先の赤字だけを見て未来投資を止めてしまえば、会社のレベルはいつまでも上がりません。
事業規模にもよりますが、当事務所では「まずは1,000万円の融資を目指す」ことを最初のクエストとしておすすめしています。
ただし、1つだけ必ずお伝えしている警告があります。融資が入金されると、口座の残高が一気に増え、気が大きくなりがちです。借りたお金は自分のお金ではなく、期限付きの強化アイテムです。入金後こそ、この再認識を忘れないでください。
融資の具体的な進め方は、こちらのガイドで解説しています。
関連記事: 創業融資ガイド
ゲームと決定的に違うのは「リセットボタンがない」こと
結論から言うと、経営にはリセットボタンも攻略本もありません。だからこそ、「攻略パートナー」を持つことに意味があります。
ゲームなら、失敗してもセーブ地点からやり直せます。しかし経営では、失った資金と信用は簡単には戻りません。一手一手の重みが違うのです。
だからこそ、月1回のステータス画面の確認と、采配を相談できる相手が必要になります。税理士は、答えを代わりに出す存在ではありません。数字の読み方や金融機関の視点といった判断材料をお渡しし、経営者ご自身の采配の精度を上げる伴走者です。ハンドルを握るのは、あくまで社長ご自身です。
まとめ|経営ゲームの攻略チャート
- 経営は「ゲームのように」=遊び半分ではなく、上達の構えで毎日「ログイン」する
- スコアは売上・利益・手元資金の3点セット。試算表と資金繰り表で確認する
- 支出は「スコアに効くか」で考える。売上との関連性が経費の判断の軸になる
- 経営者の本業は人・もの・金の采配。いい仲間が欲しければ、まず会社のレベルを上げる
- 装備は全部買えない。薬草(手元の運転資金)を残すバランス購入が社長の采配
- 時間は有限。貯まるまで待つより、スピードを買う判断も采配のうち
- 融資は期限付きの強化アイテム。使い道は未来投資(人はレベルが上がるまで赤字。その期間を薬草と融資で耐える)
- ただし経営にリセットボタンはない。だから攻略パートナー(伴走者)と采配の精度を上げる
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