個人事業主が節税のために法人化したり、個人事業の一部を法人で行うなど耳にしたことがあるかもしれません。
法人を設立すると節税になるの?
個人事業主のままの方がよいのか?
マイクロ法人ってなんなの?
法人化を検討する方は、そんな疑問がよぎるところだと思います。
このページでは、マイクロ法人の設立のメリットや法人化するための所得金額のポイントを説明します。
目次
マイクロ法人とは?
マイクロ法人とは、出資者=代表者で、従業員を雇用せずに代表者1人で事業を行う法人を指します。
この定義自体も曖昧で、実際には会社法その他の法律に定められた定義はなく、俗称となります。
マイクロ法人の税制等
マイクロ法人は、法律上の定義はありません。
そのため、会社法・税務上は、通常の株式会社や合同会社と同様の取り扱いとなります。
マイクロ法人は合同会社と株式会社どちらがおすすめ?
マイクロ法人を設立するにあたり、合同会社でも株式会社でも税務上の取り扱いは変わらないものの、会社法上のランニングコスト等が変わってきます。
株式会社の場合には、役員の任期があるため任期満了したら再選任し、登記を行う必要があります。
取締役の任期は最長10年となりますので、最低10年に一度は登記費用が掛かってきます。
また設立費用も株式会社の方がかかります。詳しくは会社設立費用を確認ください。
一方合同会社の場合には、社員(株式会社でいう役員)は変更がない限り再登記等は不要です。
その他株式会社と合同会社の大きな違いとして合同会社は出資者=社員(役員)に対して株式会社は出資者≠役員となります。
そのため、例えば親から子供の株式を移転する場合、株式会社の場合は株式を贈与又は譲渡などで比較的容易方法で行うことができますが、合同会社の場合には、社員とならないと出資金を移転することができないため登記内容を変更するなどの手間やコストがかかってきます。
金融機関の対応も昨今、合同会社の口座開設は厳しく審査しているようです。
設立後の汎用性等を考慮すると設立費用と10年に一度の取締役任期登記のコストが許容できるのであれば個人的には株式会社の設立をお勧めいたします。
マイクロ法人を設立するメリットは?
法人と個人で所得を分散することができることができる。
所得税は、所得金額が小さいうちは税率が低く、所得が大きくなると税率が高くなる超過累進税率を採用しています。
所得金額が900万円を超えると900万円を超える部分の税率は43%(所得税33%+住民税10%)と非常に高く設定されています。
一方、法人税等は所得金額400万円以下であれば、法人税等の実効税率は21.37%です。
そのため、個人収入(利益)の一部を法人収益(利益)に変更することでできれば、この税差額分は節税効果が得れてることとなります。
※安易に行ってしまうと租税回避行為等になる恐れがございます。税理士等の専門家にご相談の上、ご対応ください。
節税対策の幅が広がる。
節税対策には法人でしかできないもの多く、よく利用される節税対策の例を挙げておきます。詳しくは面談等でお尋ねください。
なお、個人事業主でも活用できるものもございます。
社会保険に加入することができる。
法人から役員報酬を得る場合には、強制的に社会保険に加入しなければなりません。
社会保険の加入は、会社を運営でメリットにもデメリットにもなりえます。
個人事業主で健康保険料が高額となっているケースでは、マイクロ法人を設立し、社会保険はメリットのほうがケースが多いです。
個人事業に比べて融資金額の枠が広がる
一概に判断することは難しいですが、個人事業主に比べて法人の方が融資の枠が広がる傾向にあります。
中小企業の実効税率
法人税等の税率はざっくり分けて①400万円以下②400万円超~800万円以下③800万円超~1000万円で税率が変わってきます。
実効税率で比較すると所得金額が②400万円超~800万円以下が23.17%に対して、③800万円超~1000万円が33.58%と大きく税率が跳ね上がります。
この点を考えると中小企業は所得金額を平準化させ所得金額を800万円以下にすることにより一つの節税対策となることとなります。
所得金額 | 実効税率 | 表面税率 |
---|---|---|
①400万円以下 | 21.37% | 22.39% |
②400万超~800万円以下 | 23.17% | 24.86% |
③800万円超~法人税額が1000万円以下 | 33.58% | 36.80% |
法人税の実効税率の算出計算
・実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率+特別法人事業税率) ÷(1+事業税率+特別法人事業税率)
具体的な計算
下記表は、所得金額が400万円・800万円・1000万円だった場合の実際の税額を算出しました。
法人税等の税額の目安にしていただければと思います。
当期利益 | 税率 | 400万円 | 800万円 | 1000万円 | |
---|---|---|---|---|---|
法人税 | 年800万以下 | 15.0% | 600,000 | 1,200,000 | 1,200,000 |
年800万超 | 23.2% | 464,000 | |||
地方法人税 | 10.3% | 61,000 | 123,600 | 171,000 | |
法人住民税 | 均等割 | ||||
法人税割 道府県 | 1.0% | 6,000 | 12,000 | 16,000 | |
法人税割 市町村 | 6.0% | 36,000 | 72,000 | 99,000 | |
法人事業税 | 年400万円以下 | 3.5% | 140,000 | 140,000 | 140,000 |
年800万円以下 | 5.3% | 212,000 | 212,000 | ||
年800万円超 | 7.0% | 140,000 | |||
特別法人事業税 | 37% | 51,000 | 130,240 | 182,000 | |
合計税額 | 894,000 | 1,889,840 | 2,624,000 | ||
実際の税率 | 22.35% | 23.62% | 26.24% |
資本金1千万以下を想定とし均等割は含めておりません。
所得税及び住民の税率
個人の所得税率と住民税率を記載しておきます。
個人所得は所得金額900万円を超えてくると税率が43%と高くなるため、個人事業から法人化の一つのポイントとなります。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
1,000円 から 1,949,000円までの所得 | 所得税5%+住民税10%=合計15% |
1,950,000円 から 3,299,000円までの所得 | 所得税10%+住民税10%=合計20% |
3,300,000円 から 6,949,000円までの所得 | 所得税20%+住民税10%=合計30% |
6,950,000円 から 8,999,000円までの所得 | 所得税23%+住民税10%=合計33% |
9,000,000円 から 17,999,000円までの所得 | 所得税33%+住民税10%=合計43% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで所得 | 所得税40%+住民税10%=合計50% |
40,000,000円 以上の所得 | 所得税45%+住民税10%=合計55% |